Gセレクション 川本実果 個展 Fleeting
2023.8.29-9.10
gallery G
photo by Kensuke Hashimoto
さざなみは絶え間ない流動性を持つ。それを見れば、時間の経過が視覚として私たちの前に現れる。
鎌倉前期の歌人、鴨長明も「方丈記」の冒頭において川の流れや水の泡を、世の中の人とその住居の「無常」を表現する例えとして用いた。時間に支配される私たちの知覚空間においては、万物は「儚い」ものである。儚さを示す言葉はいくつかあるが、この展示タイトルにFleeting という単語を選んだのはその語源にある。fleeting は浮かぶ、流れるという意味の語源から派生したものであり、このことからは水や波と「時間」との関係性を見出すことができる。
この展覧会の主題は「波」ともう一つ「記憶」である。この「記憶」は「時間」を語る上で、私の中で重要な意味を成している。
なぜなら、記憶と時間は切り離せない関係にあると考えているからだ。時間という認識は、もしかしたら記憶が作るのではないだろうか。私たちが変化を感じることができるのは、その対象の元の状態を記憶しているからではないか。夜明けも日没も、夜中や昼間を記憶しているからこそ感じられるものである。もし、記憶というものが存在していなければ、私たちは時間の流れを知覚できないかもしれない。時間が存在するのは、記憶が存在するからとも考えられるだろう。私たちが時間の中に存在するのではなく、時間が私たちの中に存在している。
喧騒を離れて
2023.11.7-12.7
CREATORE with PULS 広島
企画: THE POOL
photo by Kenichi Asano