交錯する波
素材の性質を探る行為は、表現の対象であるモチーフへの視点を更新する。発泡バインダーの膨張を利用した研究から凹凸の併存が生まれ、それが自然の水面における波の交錯への気づきを促した。
凹で描かれた波と凸で描かれた波を重ね合わせると、異なる方向に進む波が交差し、干渉し合うような表情が現れる。ここでいう凹の波は、発泡バインダーの膨張によって布が部分的に引き寄せられ、沈み込みとして現れるものであり、凸の波は、バインダー自体が表面に盛り上がることで形成される起伏である。同一の素材の挙動から生じる二つの異なるベクトル──引き込む力と押し出す力──が、別個の層として一画面上に共存することで、水面がもつ波の交錯の構造が示される。その重なりは単なる模様ではなく、自然の水面に見られる複雑な揺らぎやリアリティを喚起した。
近年は実際の波を撮影した映像を繰り返し観察し、刻々と移動し交差する複数の波の関係性を詳細に読み解いている。波がどのように重なり合いながら水面を構成しているのかを解体的に捉えることで、その重なりの構造をより深く抽出する試みである。さらに、その観察が発泡バインダーの新たな表現の可能性を引き出し、今度は素材研究を更新する。素材とモチーフが互いに作用し合う循環の中で、これらの作品群は展開を続けている。
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波紋

































